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2022/02/08 18:05

1. サボン ド マルセイユの誕生

オリーブの木が豊富に生える南仏プロヴァンス地方に位置するマルセイユ。そのマルセイユでサボン・ド・マルセイユ(マルセイユ石鹸)が製造され始めたのはいつかご存じでしょうか?

9世紀にはすでに石鹸産業のはしりとも言える石鹸工場があり、マルセイユを中心としてフランスのツーロン、イタリアのベニス、ジェノバ、サボア(石鹸、savon、サボンの由来)などでも石鹸が製造されるようになったと言われています。オリーブオイルとカマルグの塩分を含む環境で育った植物から採れる自然の灰を使い、マルセイユ特有の暖かい気候とミストラルの風が乾燥した石鹸作りに適していたことから、マルセイユでは、「オリーブオイル」で作るナチュラルな石鹸の発祥地となりました。 


2. サボン・ド・マルセイユの発展

サボン・ド・マルセイユは、ヨーロッパや地中海を越え輸出され、世界的な成長へと発展していくことになります。
しかし、発展していく中で、粗悪な品質の石鹸が出回るようになったため、1688年にフランスのルイ14世により原料、製造方法、製造期間などを厳しく規制する勅令が出され、ナポレオンの時代1812年には、石鹸の地理的ルーツを保証する法令が出され、石鹸製造業者に厳しい製造基準の徹底を強いて品質を守ることにしました。

それは、マルセイユ市にある石鹸製造メーカーが作るオリーブオイルを使用したマルセイユ石鹸にだけ、ペンタゴン(5角形)の特別なマークを与える勅令でした。ペンタゴンの中央には“オリーブオイル”、“製造社”、“マルセイユ市”が刻印され、この印により「マルセイユ石鹸」の品質やブランドが守られることになり、サボン・ド・マルセイユの名と品質の良さを広めることにつながります。

18世紀初めには、マルセイユとその周辺の地域では65の石鹸メーカーが存在し、生産の中心地となり、1793年のフランス革命の危機に直面したものの石鹸産業はさらなる成長を続け、18世紀は石鹸産業において繁栄の100年となりました。



3. サボネリー・デュ・ミディの誕生と石鹸産業の衰退

そのような時代の中で、私たちが総代理店を務めるマルセイユ石鹸ソープメーカー「サボネリー・デュ・ミディ (Savonerrie du Midi)」は、1894年に創設されました。しかし、20世紀初めには、世界恐慌や2度の世界大戦により生産量も落ち込み、石鹸製造業者が激減。
マルセイユ石鹸産業の繁栄に終わりが訪れることになります。大戦後も、時代の流れとともに機械化が進み、石油系洗剤が市場に出回り、マルセイユ石鹸産業は合成洗剤との競争に大打撃をうけ、急激な衰退へと傾いていくのです。

この状況を生き残るために、マルセイユの大手ソープメーカーは、最新型の機械を取り揃えたものの、小規模なメーカーは廃業せざるを得ませんでした。



4. サボン・ド・マルセイユの復活

サボネリー・デュ・ミディも廃業の危機に多々直面したソープメーカーの1社です。大手メーカーの傘下に入るという選択を繰り返しながら、伝統を絶やさない、守り続けることを大切にした当時のオーナー達が忍耐強く、「Green Gold」のサボン ド マルセイユを作り続けたのです。そのような時期を経て時代が移り変わり、合成的な洗剤や成分がお肌や環境に与える影響が再注目され、自然回帰の流れが出てくることになるのです。そして、徐々に“ナチュラルさ”と“正真正銘の製品である”、サボン・ド・マルセイユの素晴らしさが再評価されるようになります。

サボネリー・デュ・ミディは、
老舗ソープメーカーとして伝統を守り続けました。120年以上を経たマルセイユにある本社は、時代の流れに合わせて進化しつつも、当時の面影を残し、伝統を大切にし、今も変わらずオーセンティックなサボン ド マルセイユを作り続けています。


5. UPSMの創設


激動の長い歴史を経て、現在、サボン・ド・マルセイユを製造するソープメーカーは4社のみとなっています。私たちが総代理店を務めるサボネリー・デュ・ミディを含め、LE SERAILLE FER A CHEVALMARIUS FARBLの4社です。

2011
年に、模倣品から、本物のサボン・ド・マルセイユを守るために、UPSMを創設します。※UPSMとは、the Union of Marseille Soap Professional -マルセイユ石鹸組合-
 の略

かつての時代に出された勅令のように、4社のソープメーカーがもう一度「サボン・ド・マルセイユ」の定義を再認識しました。

 ・全成分のうち、72%以上植物油を使用している
 ・動物油などの植物油以外の油脂を使用していない
 ・合成成分を一切使用していない
 ・伝統的な釜炊きけん化法で製造されている
 ・フランスのマルセイユで製造されている

上記の地理的ルーツと伝統的製法、厳しい基準を守り、本物のサボン・ド・マルセイユであることを保証する製品にのみ承認ロゴを刻印することを決められました。サボネリー・デュ・ミディが製造する全ての「サボン・ド・マルセイユ」は、これらの厳しい基準をクリアし、正規認証を取得しUPSM認証のスタンプが押されています。


6. サボネリー・デュ・ミディの現在

現在、サボネリー・デュ・ミディは、サボン・ド・マルセイユのブランドを守り、広めるべく精力的に活動しています。2018年には、マルセイユに直営店「La Corvette」をオープンしました。創立と同時に誕生した「La Corvette」ブランドは、18世紀のセーリングシップが描かれたネイビーブルーのロゴで、当時オリーブオイルを運んでいた船の名称が由来となっています。

La Corvette」は、120年以上の歴史を象徴する特別なプレミアムブランドで、フランスでは百貨店や専門店で販売されており、ブランドを広める活動を積極的に行っています。また、工場内にもサボン・ド・マルセイユの歴史に触れることができるアトリエが作られ、歴史や製造工程の説明を受けることができます。




サボン・ド・マルセイユをご使用頂いているお客様の中には、石鹸の歴史に魅力を感じている方もおられるかと思います。もしくは、背景を知らずとも、ただただサボン・ド・マルセイユの良さを感じて使い続けて頂いてる方も。どちらにせよ感謝しかありません。


コロナが落ち着いてマルセイユを訪れる機会がありましたら、ぜひマルセイユ石鹸の歴史に触れるスポットとしてアトリエを訪ねてみてください。サボン・ド・マルセイユにまつわる様々なことを知ることで、さらにファンになって頂けたら、フランスのメーカー含め、日本の総代理店である私たちもとても嬉しいです。